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2009年8月の2件の記事

2009.08.13

「ヒウィッヒヒー」商標騒動と商標制度の認識度

昨日(8月12日),商標に関してちょっとした騒動がありました。きっかけとなったのはこのニュース記事です。なお,このニュースは,記事の最後に書かれているとおり,結局誤報であると発表されました。

【トレビアン】広瀬香美が『ヒウィッヒヒー』を商標登録 「使わないでくれ」?

今回触れたいのは,誤報だったということではなく(それはそれで問題ですが),商標制度が一般の人に正しく知られていないという点です。

昨日このニュースが公開された直後から,ネット上でいろんな書き込みがされました。たとえばこんな感じです。

商標 since:2009-08-12 - Twitter Search
広瀬香美「『ヒウィッヒヒー』は商標登録したから、勝手に使うなよ庶民ども」

どうして商標をとるのか,結局金儲けか,ひどい,という様な内容の書き込みがたくさんあります。商標制度はかなり嫌われているようです。

なぜこんなに嫌われているのか?

嫌われている理由のひとつが,商標制度に対する誤解だと思います。誰かが商標を取ると,もうその言葉を全く使うことができなくなると誤解している人がいます。区分が違えば使ってもいいとかそういうレベルではなくて,許可無くその言葉をブログに書いたり話したりすることさえできなくなると誤解しているのです。商標は商品等に対して使用するものであるという認識がないのです。この誤解は,「のまネコ」や「阪神優勝」,「NPO」など,これまで何度も繰り返されてきました。

この誤解に加えて,商標をとって独占することに対する嫌悪感もあるようです。特に今回のようにネット上で話題になったものについては,嫌悪感をもたれることが多いようです。みんなで作った,みんなで盛り上げた,という意識があるのかもしれません。「のまネコ」もそうでした。(8/15訂正)他人に取られたらビジネスで使えなくなってしまうので出願しておく,などといった事情は理解されていません。

商標制度を誤解している人は多く,そして誤解は繰り返されています。この誤解は解消したい。嫌悪感も同じです。これを改善できるのは誰でしょうか?。 特許庁なのか? 弁理士会なのか? 発明協会なのか?。いずれにしても,商標制度を知っている人にしかできません。それぞれの立場でそれぞれができることをやっていくといいのかもしれません。ブログに書くとか顧客に話すとか。


ところで,この騒動が起こっている間,私は都内で知財系飲み会を開催していて,企業の知財担当者や弁理士,大学の先生らと飲んでいました。従って,残念ながらリアルタイムで騒動を感じることができませんでした。もし騒動が起きているときにネットにいて上のニュースを見たら,こうつぶやいたはずです。

「こんなにすぐに登録されるはずはない。何かが間違ってる」

なぜなら「ヒウィッヒヒー」が生まれたのは7月22日なのです。

決定!twitterの源氏名は、、、、、ヒウィッヒヒー に、決定!
 

【8/14追記】
上述した誤解されがちな点などについて,一般の人を対象にわかりやすく書かれている記事。全ての人に読んでもらいたい記事です。
【保存版】商標制度に関する基本の基本 | 栗ブログ

【8/15追記】
「のまネコ」騒動と「ヒウィッヒヒー」騒動には大きな相違点がありますね。「ヒウィッヒヒー」が広瀬香美によって作られたものであることについて争いはありませんが,「のまネコ」騒動では,ネット上で生まれたモナー等の著作権をエイベックスらが侵害しているのではないか(エイベックスは当初「インスパイヤされた」と表現していた)という点が大きな争点でした。この点で「ヒウィッヒヒー」騒動とは異なります。なお,当時,「のまネコ」が商標登録されるとモナー等のアスキーアートを掲示板で使用できなくなってしまうという書き込みが多数ありましたが,これは商標制度の誤解によるものです。
※関連リンク
★パテントサロン★ トピック 商標出願問題 -のまネコ,ギコ猫,青森,NPO・ボランティア,阪神優勝-
 

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2009.08.03

自民党マニフェストに出てくる知的財産

自民党がマニフェストを公開しました。知的財産に関連する記載があるでしょうか? 民主党のときと同じように,中身を見てみます。

自由民主党
自由民主党|自民党の政策「みなさんとの約束」

 ※参考
  民主党マニフェストに出てくる知的財産


自民党の政策「みなさんとの約束」には,要約版と政策BANKの2つのファイルが掲載されています。まず要約版から見ていきます。

要約版の15ページにコンテンツに関する記載があります。と,ここで引用しようとしたところ,このPDFファイルはコピー禁止の設定になっていて,コピペできません。ということで,手書きで引用します。ちなみに民主党のPDFファイルはコピーできました。

独自のコンテンツや伝統文化を盛り上げ、世界へ。
同時に、観光でも魅力ある「ジャパン」を目指します。

ゲームやアニメ、キャラクターなど,日本が強みを持つコンテンツ。
お家芸ともいえるこの分野の人材育成、製作者の待遇改善を行い、世界に誇る作品が生み出される環境を作ります。
デジタルアーカイブ化を通じて日本文化を国内外へ発信。地域の文化・芸術・音楽活動の進行・継承に努めます。
「ビジット・ジャパン・キャンペーン」を進め、2020年までに観光で訪れる外国人2000万人を目指します。(15ページ)
これ以外に知財に関連する記述を見つけることはできませんでした。中小企業のものづくり技術のサポートとか世界と闘える研究者を増やすなど技術に関連する記載はありますが,知財について明確に記載されている部分はありませんでした。


次にこの要約版のもとになったと思われる政策BANKの方を見てみます。

24,25ページあたりに少し関連しそうな言葉が出てきます。「ものづくり技術の開発や支援策の継続・拡充」,「イノベーションの推進によるサービス部門のいっそうの生産性向上」,「科学技術創造立国の実現」,「ips細胞や太陽電池をはじめとする生命科学・エネルギー技術など、世界をリードするわが国の革新的研究・技術開発を戦略的に行い…」など。しかし,「知的財産」,「発明」,「特許」など,明確に知財に関連する言葉を見つけることはできませんでした。

余談ですが,25ページの下から4行目に「IT技術」という記載があります。これは「腹痛が痛い」や「チゲ鍋」みたいであまりかっこよくありません。揚げ足を取るようですが,何たってマニフェストですから。

さて,要約版にあったコンテンツに関する部分はどのように記載されているでしょうか? と思って探したのですが見つかりません。27ページに「観光立国の実現」,「ビジット・ジャパン・キャンペーン」という言葉が載っていますが,コンテンツに関する記載がありません。確認のため「コンテンツ」,「伝統文化」,「ゲーム」,「アニメ」という言葉で全文検索してみましたが,ヒットしませんでした。う~ん,要約版は政策BANKの要約ではないのか。それぞれの位置づけがよく分からなくなってきました。


ところで,自民党サイトには,上述した2つのファイル以外に,「政権公約発表記者会見 麻生太郎総裁発言(全文)」が掲載されています。

政権公約発表記者会見 麻生太郎総裁発言(全文)

こちらにも知財に関する言及はありませんでした。


自民党のマニフェストについてはこのような状況でした。さて,他の政党のマニフェストはどうでしょうか。

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