見出しの無断使用はNG!の件,
今日判決が公開されたので早速目を通した。
最も気になっているのは,不法行為に関する判断の内容だ。
H17.10. 6 知財高裁 平成17(ネ)10049 著作権 民事訴訟事件
【注意事項】
私は弁理士資格は持っていません。また弁護士でもありません。
法律的な経験としては,
企業における約9年間の特許実務と,
普通の人よりちょっと多く知財関連のニュースを読んでいることくらいです。
ということで,このブログが法的に正しいという保証はありません。
さて,判決では読売側の主張の大半は理由なしとされ,
唯一理由があるとされているのが,不法行為に基づく損害賠償だ。
控訴人の請求は,不法行為に基づく損害賠償として23万7741円の限度で理由があり,その余の請求は理由がないので,原判決を上記請求認容の限度で変更し,当審で追加された請求は棄却することとする。(中略)本訴における主張立証の大半は,著作権に基づく請求について行われ,この点について控訴人は敗訴している(判決より。以下同じ)
不法行為に基づく損害賠償に関する判断のポイントはこちら。
他人の形成した情報について,契約締結をして約定の使用料を支払ってこれを営業に使用する者があるのを後目に,契約締結をしないでそれゆえ無償でこれを自己の営業に使用する者を,当該他人に実損害が生じていないものとして,何らの費用負担なくして容認することは,侵害行為を助長する結果になり,社会的な相当性を欠くといわざるを得ない。そうすると,結局のところ,被控訴人が行った侵害行為による控訴人の損害及び損害額については,控訴人と被控訴人が契約締結したならば合意したであろう適正な使用料に相当する金額を控訴人の逸失利益として認定するのが相当である。
賠償額に関する判断はこちら。
途中出てくる「ホットリンク」とは,
読売と契約して有料で見出しを使用している企業。
そこで,控訴人主張の契約実例を一応の前提として,この点に関する被控訴人の主張を参酌しながら,検討してみると,次のとおりである。
上記ホットリンクとの契約においては,65個(乙30の1~6によれば,これより多い可能性もあるが,被控訴人が自己に不利な65個であることを自認していることなどを考慮し,その限度で認定する。)のYOL見出しが表示されるようにプログラムされていることが認められる(乙24,30の1~6)。これによれば,実質的には,1日当たり65個のYOL見出しの提供について月額10万円の契約がされているものということができる。そうすると,被控訴人が主張するように,前記のとおり,被控訴人がYOL見出しを無断で使用した個数は,一日当たり7個(前記のとおり1日平均6.0個であるが,被控訴人が自ら一日当たり7個であることを自認した上,これを前提に議論をしていることなどを考慮し,7個とする。)であるから,その割合で計算すると,月額は,1万0769円(10万円÷65×7)となる(もっとも,契約の実態として使用した実数を基礎に支払うべき使用料が約定されることが通例であるとは思われないが,ないとも思われない。)。そして,前判示のとおり,平成14年10月8日から同年12月7日までの間については,被控訴人の具体的行為が主張立証されているものの,それ以降平成16年9月30日までの間については,抽象的な主張にとどまっている。しかし,前掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,その後も前判示同様の違法行為が継続していたものと容易に推認することができる(被控訴人も外形的な行為が継続していたこと自体は積極的に争う趣旨ではない。)。そうすると,控訴人主張の上記契約実例を前提に使用した実数に基づいて計算すると,平成14年10月8日から平成16年9月30日までの23か月24日間の使用料相当損害額は,25万6024円(1万0769円×(23+24/31))であるということになる。
(中略)
以上のように,控訴人には被控訴人の侵害行為によって損害が生じたことが認められるものの,使用料について適正な市場相場が十分に形成されていない状況の現状では,損害の正確な額を立証することは極めて困難であるといわざるを得ない。そうであってみると,民訴法248条の趣旨に徴し,一応求められた上記損害額を参考に,前記認定の事実及び弁論の全趣旨を勘案し,被控訴人の侵害行為によって控訴人に生じた損害額を求めると,損害額は1か月につき1万円であると認めるのが相当である。
そうすると,控訴人に生じた損害額は,侵害期間が23か月24日間で,1か月につき1万円であるから,23万7741円(1万円×(23+24/31))であるということができる。
以上が不法行為に基づく請求に関連する判断のポイントである。
ところで,非常に驚いたのだが,
読売は控訴するにあたり,見出しの著作権侵害の他に,
記事の複製権侵害の主張を追加していた。
被控訴人は,その所有するパソコンのハードディスク内にYOL見出し及びYOL記事のキャッシュデータを保存してはならない。
YOL記事は,インターネットウェブサイト上のニュース記事という特殊性はあるものの,内容と性質において,新聞紙面上の新聞記事と何ら異なるものではないから,新聞記事と同様に著作物であることは明らかである。(中略)
Yahoo!ニュース上に掲載されたYOL記事を自己の営業の直接の対象にして,これらから経済的な利益を得る目的で,被控訴人が使用するパソコンのブラウザソフトに表示させることによって閲覧し,同時にYOL記事のキャッシュデータを被控訴人パソコンのハードディスクに保存することによって,YOL記事を有形的に再製した。
(読売の請求と主張。)
なんと,ブラウザのキャッシュ機能が著作権を侵害していると主張しているのだ。
これに対してライントピックスは,あたりまえの反論をしている。
「キャッシュ」はウェブページ閲覧の速度を上げるなど,閲覧の便宜を図るためブラウザソフト全般に技術的,システム的に構築されたものであり,ユーザが無意識のうちに,経路上のシステムによって,必然的に形成されるものであって,キャッシュデータ自体,ウェブページ閲覧の目的以外には使用されない。そして,当該ウェブページが閲覧されなくなれば,比較的短期間のうちに,ユーザの意識しないところで機械的に消去される。このようなキャッシュデータの蓄積から消去に至るまでの過程は,ユーザが一度も意識することなく,閲覧という目的のためだけにブラウザソフトが機械的に行うものであり,著作権法上の「複製」概念とは全く異なるものであって,「複製」には当たらないと解すべきである。
この点について読売は,
理由は分からないが途中で主張をやめている。
従って判断はされていない。